全裸ヨガ:練習者たちの感覚とその効果
日本ではどうやっても合法的に行われることはないと思われるネイキッドヨガ(全裸ヨガ)ですが、実は海外ではクラスとして行われているところは多数あります。なぜ海外では受け入れられる傾向があるのか、実際本当に効果があるのか、それを自分のアーティストとしての経験を交えて考えてみました。
全裸ヨガとアート文化
日本と欧米のアート教育
よく欧米の方では日本ほどヌーディティに対する違和感はないといいます。
それはアート教育の違いが大きく影響していると思います。
では欧米のアート教育とはどのようなものか。
ダンサーとしての経験から
欧米では身近なアート
私のバックグラウンドであるダンサーとしてお話します。
日本のテレビでよく見かけるヒップホップダンスや歌手のバックダンサーではなく、コンテンポラリーやモダンダンスなどバレエに近いアート性の高い分野です。
人間の感情表現や体の絵としての美しさを追求する分野で、日本ではあまり見る機会はないでしょう。
しかし欧米では子供のクリエイティブさを刺激する学校教育の一貫としても取り入れられ、大学でも選考して学ぶ芸術学部ダンス学科を持つところは多数あります。
日本にも一部、舞踊学科が存在する大学はありますが、一般には知られていない話だと思います。
卒業した後もオーディションを受けてダンスカンパニーに入り、フルタイムの契約ができたり、職業として確立されています。
ヌーディティに触れる機会
ダンスカンパニーの中には男女みんな上半身裸で踊るという作品もあり、つまり海外ではアートという観点になればヌーディティというのは当たり前のように見かける身近なものです。
私はアメリカで Shen Wei というダンスカンパニーを見て、そこの作品は彫像が動いているように美しく、全く別の世界を現実世界に作り上げていて度肝を抜かれました。
http://www.shenweidancearts.org/landing/
正直、あの様な世界を目の当たりにすると人間の裸体というものに対しての感覚や認識は一変します。
この様なアートは日本では興味のある人だけが足を運んで目にする機会はありますが、日常にはなかなか存在しません。
それを考えると欧米では日本ほどヌーディティというものに違和感のある反応をしない、というのも納得できるのではないでしょうか。
全裸ヨガ(ネイキッドヨガ)とは?
ニューヨーク発の全裸ヨガ
当時のブーム
もう4年ほど前でしょうか?ニューヨークで全裸ヨガのクラスを行うスタジオがあるということでニュースで取り上げられ、全世界で話題になりました。
私も当時ニューヨークでダンサーとして活動していましたが、聞いた時は驚きました。
アートへの理解が高いこの街でも賛否両論。
狂ってるという意見が多かったのですが、深いアートの世界には興味があるという人たちもいました。
全裸ヨガを有名にしたスタジオ
当時メディアで取り上げられ、全裸ヨガの火付け役となったのがニューヨーク、チェルシーにあるヨガスタジオ BOLD&NAKED YOGA です。
http://www.boldnaked.com
オーナーであるジョス・シュワルツさんとモニカ・ワーナーさんの2人により運営されています。
私はヨガの資格をニューヨークで取得し、教えていますが、実はモニカさんの方はヨガ教師としてもレベルが高く、有名な方で共通の知り合いがたくさんいました。
そこでこの記事を書くにあたり話を聞いてみようと連絡をとって見ました。
現在のニューヨークの全裸ヨガ
BOLD&NAKED YOGA の現在
モニカさんに会って話を聞いてみました。
実は BOLD&NAKED YOGA は今年スタジオのリースが切れ、閉鎖せざるを得ないということでスタジオは現在なくなってしまったそうです。
当時のブームももうすぎてしまったようです。
モニカさんの自宅にあるプライベート用のヨガルームでプライベートレッスンのみ行なっているとのことです。
もちろん男性、女性またはカップルでも受けることは可能です。
ただしヨガに対して真面目な人であることを証明するために簡単なアンケートがあります。
これまでのヨガの経験や自分のレベル、全裸ヨガを経験してみたい理由などを書くアンケートです。
レッスン料金も$165とかなり高く、本気のモチベーションがないと挑戦しようとはならないですね。
スタジオクラスについて
ちなみに BOLD & NAKED のスタジオクラスは閉鎖していますが、他にも全裸ヨガを行なっているスタジオはあります。
それらに見られる共通のルールがあったのでそこを記載しておきます。
・女性専用のクラスもありますが、普通のクラスは男女どちらもOK。
・何かどうしても、という理由がない限りすべて衣服は脱ぐこと。
・あくまで真面目な練習ですので不純な動機で来ているとわかる人は退室していただく場合があります。
と書かれていました。
全裸ヨガに至る文化
モニカさんの話
モニカさんの全裸ヨガに対する考えを聞いてみました。
まず裸になるということですが、先に私が述べたように欧米では日本ほどの抵抗はないということです。特にモニカさんはドイツ人ですがヨーロッパはアートや自然の一部としての人間の存在という意識が高く、ヌードビーチなどもありアメリカ以上に開放的で抵抗がないそうです。
私の経験からの考察
私も経験からアートに対する理解が深い人ほど、そこの抵抗はないんだなという印象はあります。
特にダンス公演など、日本のように控え室が男女分かれていない劇場が多く、男女同じ控え室で異性がいても平気で裸で歩き回っています。
アートへの関心が高い人には裸ぐらいなんでもないという感覚なのでしょう。
全裸ヨガの効果
モニカさんの答え
モニカさんにどんな効果があるのかと聞くと、答えは
・より効果的な練習ができる。
・周りと自分の繋がりを感じやすくなる。
・精神の修行がより高いレベルでできる。
などです。
あと、なるほどと思ったのが
・クラスで人に見られることで自分の体に対するコンプレックスに打ち勝つ強さを身につける。
というものでした。
私なりの考察
体の感覚
私なりの意見ですが、確かに布1枚まとうのと全部脱ぐのとで人間の感覚というのは本当に変わります。
これもダンスからの経験になりますが、例えば T シャツ、タンクトップ、何も着ていないので踊っている時の体の感覚が明らかに違うのです。
露出が多いほど感覚が敏感になって空気の抵抗や筋肉、骨の動きを感じられるのでとても踊りやすく、体からも普通以上のエネルギーがでているというのを感じました。
心の感覚
心の部分ですが、実際ヨガ教室では男性ならショートパンツ1枚に上半身裸、女性はスポーツブラにショートパンツという露出度は高い状態、とはいえほとんどの人はここまでは平気でしょう。
しかしそこからパンツも脱ぐというのは全く別、かなり大きな壁になるでしょう。周りが気になって仕方がないはずです。
人の心というのは壁を隔てることで落ち着かせる傾向があります。
その壁をすべて取り払えば心を落ち着かせることは難しくなるでしょう。
集中の修行として
ヨガの修行の1つ、ダーラナ(集中)というものがあり、外とのこだわりを一切捨てて自分の内面に集中する練習です。
よくネット記事で全裸ヨガは心も解放的になり心地よく練習できる、とありますが、正直解放的で心地よいと感じるというのはすでにかなりレベルの高い集中に達している人ではないかと思います。
クラスであれば周りに人の気配を感じますし、自分を守るものを何も1つ身につけていないという無防備状態、その状況で心を落ち着かせて、ましてや解放的と感じるというのはなかなかできない集中力ではないでしょうか。
このような集中状態を一糸まとわぬ姿で達成できるなら、それは精神の修行として1枚向こうの壁に行けるのではないかと思います。
まとめ
効果のまとめ
感覚が鋭くなるというのは確かで、体より精神的なに作用する面が大きい様です。
ヨガの本来の目的は自分の感覚と一体となり、体も心も自在に操れるようになること、なので周りに影響されない強い精神を身につけるという意味では修行としての効果は大きいと言えますね。
今でも簡単に体験できます
現在でもニューヨークにはネイキッドヨガのクラスが簡単に受けられる場所はあります。
http://www.nakedinmotion.com
例えば2017年3月の現時点ではマンハッタンの Naked In Motion というスタジオ、今でも毎週水曜日15ドルというかなりお得な価格で受けられます。
日本では体験できるようになるとは思いませんが、海外に出れば意外と簡単にクラスが受けられるものなのです。